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21話 燃え上がる独占欲と、裏切りの光景

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-09-06 07:00:53

 だが、自分の腕に絡むヒナの指の温もりが、それが紛れもない現実であったことを告げていた。ヒナのシャンプーと、彼女自身の甘く、どこか艶めかしい混じり合った香りが、まだ鼻腔をくすぐり、全身の感覚を呼び起こす。

 (どうして、あんなに積極的だったんだろう……? 嫌がるどころか、むしろ俺を誘うような……)

 熱を帯びた身体の奥から湧き上がる、じわりとした快感の余韻。ヒナの瞳の奥に見た、あの潤んだ輝きが、ユウマの胸を締め付けた。初めての経験だったはずなのに、まるで長年愛し合ってきた恋人のように、彼女はユウマの全てを受け入れた。その記憶が、ユウマの思考を支配する。

 二人は自然と腕を組み、朝のまぶしい光の中を大学へと向かった。腕に絡むヒナの指先から伝わる柔らかな感触と体温が、ユウマの心臓を穏やかに揺らした。アスファルトの照り返しが眩しく、蝉の声が降り注ぐ中、二人の足音だけがリズムを刻む。

 「ねぇ、ユウくん、昨日の夜さ……」

 ヒナが耳元で囁くように話しかけてくる。その声は、まだ少し眠たげで、そしてどこか甘い響きを含んでいた。ユウマの顔が、また熱くなる。

 「しっ……誰かに聞かれるだろ」

 ユウマもまた、ヒナの耳元に顔を寄せ、小声で返した。二人の間に、まだ朝のエッチの余韻が漂っている。ヒナはくすりと笑い、ユウマの腕に絡ませた指を、そっと絡め直した。その仕草一つ一つが、ユウマの胸を甘く締め付ける。

 「だって、ユウくん、顔真っ赤だよ? 可愛いー」

 ヒナは楽しそうに、ユウマの顔を覗き込む。その瞳はキラキラと輝き、まるで悪戯を仕掛けた子供のようだった。ユウマは思わず目をそらしたが、ヒナの笑顔が眩しくて、心臓がドキドキと高鳴るのを止められない。二人の間には、誰にも邪魔されない、甘く、そして少し恥ずかしい秘密の空気が流れていた。

 教室に入り、講義が始まっても、ユウマの意識は一向に集中できなかった。黒板の文字も、教授の声も、遠い世界のことのように霞んで聞こえる。彼の頭の中を占めているのは、ただひたすらヒナのことばかりだった。彼女の笑顔、声、そして、今朝の甘い記憶。それらが繰り返し脳裏を巡り、ユウマの心を支配していた。彼女の隣にいる時の、あの心地よい安堵感と、心臓が高鳴るようなときめきが、授業中もずっと彼を包み込んでいた。

 ボーっと窓の外を眺めていると、見慣れたグループが目に入った。いつもヒナが一緒にいる友人たちだ。そして、その中に……ヒナの姿があった。

 え? 俺は一瞬にしてフリーズした。まるで時間が止まったかのように、俺の視界に映る光景だけが鮮明に焼き付く。ヒナが、隣の男の腕を掴んで歩いている。しかも、恥ずかしそうに俯き加減で、その男の隣を歩いているのだ。

 あまりのショックに、授業が終わると同時に、ユウマは昼食を一緒に食べるというヒナとの約束を無視して、一人で足早に帰路についた。午後の授業に出る気力も起きず、そのまま休んでしまった。

 ……やっぱり、俺じゃ……ヒナには釣り合わないんだ。

 そんな負の感情が、とめどなくユウマの心を包み込んだ。何もかもやる気が起きず、本当ならこのまま布団に潜り込んでしまいたかったが、ヒナとの思い出が鮮烈すぎて、かえって苦しい。結局、彼はリビングのソファに毛布を持ち出し、それにくるまってぼんやりと映画を眺めていた。映像は目に映るものの、内容は全く頭に入ってこない。

 スマートフォンが昼頃からしきりに鳴り続けていたが、画面を見る気にもなれず、途中から電源を切ってしまった。どうせ男友達からの飲み会の誘いか、月に一度連絡があれば良い方の両親からの連絡だろう。ヒナからの電話であったとしても、今は出る気になれない。彼女の名前が表示されること自体が、ユウマにとっては耐え難い苦痛だった。

 なんなんだよ……ヒナ。

 夜から朝にかけて、俺と肌を重ねておいて、午前中に少し会えない時間があっただけで、もう他の男と仲良くしてるのかよ。

「他の男の人には近寄らないしぃ~」って、そう言っていたじゃないか。腕を掴んで、しかも恥ずかしそうに俯いて歩いているのは……それも「近寄らない」の範疇に入るのかよ! ユウマの心臓は、怒りと絶望がない交ぜになった感情で、激しく波打った。頭の中で、ヒナの言葉と、今日見た光景が何度も何度も繰り返され、ユウマの心を深くえぐり続けた。

 これじゃ、俺がもたない……。

 これは独占欲の問題なのか? そんなことはもう……どうでもいい。まだ付き合っているわけでもないんだし、俺たちは『仲の良い友達』なんだから。

 もう、会わずにいよう。

 たった数日のことなのに、ヒナと過ごした時間はあまりにも濃すぎた。その濃密な数日が、もう二度と訪れないと思うと、悲しすぎて胸が締め付けられる。ズキズキとした頭痛と全身を襲う倦怠感が、ユウマの身体を重くする。込み上げてくる吐き気に、彼は思わず口元を押さえた。精神的なダメージが、あまりにも大きすぎた。

 めったに飲まない酒でも飲んで、無理やりにでも眠ってしまおう。こんなことを考えていたら、日常生活に支障をきたしてしまう。

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